TAKEO MABOROSHI TERMINAL

2016.11.24

MABOROSHI FESは武雄の夢を見た:FES前夜レポート

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「武雄でタイコクラブ」というキャッチフレーズのもと、武雄温泉保養村で開催された入場無料の野外音楽フェス<MABOROSHI FES by taicoclub>。Ametsub、Licaxxx、Linn Mori、TOYOMU、田我流などのアーティストが出演する人気フェスのスピンオフイベントということで、開催前から様々な音楽メディアで取り上げられた。
 
一方SNSなどでは「なぜ佐賀で?」「しかも武雄?」と言った声も散見されていたこのイベント。では実際、会場では何が起こっていたのか。祝祭前夜の武雄温泉街から振り返ってみる。

 


 

夜の帳で遊歩する、祝祭前夜

 

このプロジェクトを通じて通い慣れ、福岡空港からスムーズにたどり着けるようになった武雄温泉街。MABOROSHI FES前夜の2016年9月25日土曜日21時。現地に到着すると、明日のフェスに向けて開催されていると聞いたイベントはすでに半ば終わりかかっており、到着した時にはいつもの通り町は闇に包まれていた。

 

それでも目抜き通りには、オレンジ色の光に照らされて歩いている人影がちらほら。旅館・京都屋の入口では、日向地鶏とドイツビール、グリューワインを出す屋台が組まれている。早々に地鶏は売り切れてしまい、プレッチェルとともに出されたドイツビールをいただいた。
 
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当館のご主人によれば、同時開催されている肥前エリアをシャトルバスで周遊するイベント「ぐるぐる肥前」にあわせ、この武雄温泉街で3泊されたお客様もいるそう。確かにいつもに比べ、夜の散歩を楽しんでいる観光客の姿が目に入る。彼らの足取りを少し追ってみよう。
 
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洋菓子、昔羊羹、イノシシベーコンなど名物の並ぶ夜

 
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有田でも店をかまえる洋菓子店・グーテは、ちょうど店じまいの支度をはじめたところ。ここでも名物のクッキーが売り切れていた。ビールを片手に訪れた我々の「何かおつまみになりそうなものあります?」という野暮な注文に対して、出してもらったのがチーズクラッカー。チーズとごまが香ばしいこちらを咥えながら町歩きを楽しむことにしよう。
 
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つづく糸や呉服店では、くつした2足500円の文字。店の前ではガールズトークに花を咲かせているご婦人が2人。このあたりから、すこし町がいつもより浮足立っているように感じはじめた。
 
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「今日はコンサートに行く予定だったけど、やめにしてお店にいたのよ」と話しかけてくれたのは、さつき茶屋のお母さん。お茶はもちろん、佐賀名物の昔羊羹も人気の一品だ。

 

武雄の街角にはその場所に応じたイメージで描かれたアートが点在しており、記念撮影を楽しむことができる。当店のウィンドウガラスに描かれているのは、茶屋のイメージから傘。その前で茶目っ気たっぷりにパチリと一枚。
 
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続くカフェ喜蔵で、すこし腰を下ろしてこれからの過ごし方を考える。出していただいたのは、ハイボール。そして、イノシシの肉で作ったベーコンとソーセージだ。野趣あふれる風味と甘い脂を感じながら、それをハイボールで一気に流し込む。
 
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爆音の中にこぼれ落ちる笑みと、テキーラ

 

明日からはFESがはじまるわけで、それを楽しみにしているだろう音楽好きの若者はどこにいるのだろうかと考えた。彼らに出会いたくて、武雄のHEADSが集まるクラブ・GET FUNKに足を運ぶ。
 
温泉街を抜け市役所方面に出ると、スケートボードを抱えた若者が路上に集まっていた。そう記すと何やら素行のよくない若者がたむろしているように聞こえるかもしれないが、そんな淀んだ雰囲気はない。この夜をもう少しだけ続けたい。そんな素朴な気持ちが伝わってくるようだった。
 
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GET FUNKの中に体を滑り込ませると、壁いっぱいに積まれたスピーカーが下腹部に重低音を響かせる。クラブに出向くにはまだ早い時間だったが、すでに何人もの若者が全身でリズムを刻んでいる。日本人だけでなく外国の方もちらほらうかがえ、この町の多様性を現しているようだった。
 
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明日に向けての取材できている、ということを伝えると、マスターのミノルさんがテキーラを振る舞ってくれた。一息に飲み干すと、溢れんばかりの笑みを返してくれる。何度かそんな歓待を受けていると、次第に心地よい酔いが頭に上ってきた。ステージ上から何度も「明日は保養村でMABOROSHI FESが開催! みんな現場で会おうな!」と呼びかけられる声を浴びる。明日の光景を想像しながら、体を揺らし続けた。