TAKEO MABOROSHI TERMINAL

2017.07.24

2017年「TAKEO MABOROSHI TERMINAL」始動!/MABOROSHI FESは武雄の夢を見た:FES当日レポート

2016年初夏より始まった佐賀県武雄市の地方創生プロジェクト「TAKEO MABOROSHI TERMINAL」。海にも面してないのに、幻の「文化の港町/ターミナル」を掲げたこの一連の活動では、さまざまな芸術家やクリエイターと地域資源を結びつけるクリエイター・イン・レジデンスの運営を核に、地域密着のアートプロジェクトや、自然豊かなフィールドへ泊まり込んでワークショップを体験するプログラムなどを通して、武雄温泉の魅力発掘に努めてきました。

 

このたび、2017年も引き続きプロジェクトを推進していくことになりましたので、2016年のプロジェクト開始を告げたイベント「MABOROSHI FES by taicoclub」を振り返りながら、ここからさらに挑戦を続ける「TAKEO MABOROSHI TERMINAL」に引き続きご注目いただけましたら幸いです。

 


text_SHUN TAKEDA
photo_YUTARO YAMAGUCHI


 

「武雄でタイコクラブ」というキャッチフレーズのもと、武雄温泉保養村で開催された入場無料の野外音楽フェス<MABOROSHI FES by taicoclub>。Ametsub、Licaxxx、Linn Mori、TOYOMU、田我流などのアーティストが出演する人気フェスのスピンオフイベントということで、開催前から様々な音楽メディアで取り上げられた。

一方SNSなどでは「なぜ佐賀で?」「しかも武雄?」と言った声も散見されていたこのイベント。では実際、会場では何が起こっていたのか。レポート後編として、フェス当日を振り返る。

 


 

佐賀県武雄市、午後2時。天候、晴れ

 

会場の武雄温泉保養村には、このプロジェクトを通じて何度か足を運んだことがあった。しかし、湖のほとりの原っぱ、という印象しかなく、むしろ宇宙科学館の裏庭ぐらいにしか感じていなかった。ここでフェスを開催して、はたして本当に人が集まってくれるのか。正直そんな不安を抱えながら、当日を迎えた。
 

 
当日。ふだんは静かな保養村に、スピーカーを積んだステージトラックが現れる。荷台を横からひらくと、照明と音響が仕込まれており、ステージとすることのできる優れものだ。しかし今回はさらに、スピーカーと照明を増設。それも音楽好きなら思わずうなるVOID社のもので、ズシンと低音が響きながらも耳心地のよいサウンドが広がる。
 
セッティングが終了し、まずトップバッターとして登場したのはLicaxxx。ミニマルなテクノサウンドを中心とした選曲で、始まったばかりのフェスにタイトなリズムを響かせてくれる。
 

 

 
ふと、思う。電子音楽の最たるものであるテクノが、こんなに自然にマッチするのは一体なぜなんだろうか。
 
続いてステージに登場したのは、Linn Mori。ブレイクに合わせて体を強く揺らす彼の動きが、前列で音を浴びている音楽好きだろう来場者に、伝染していく。それが次第に会場全体の一体感をつくりだしていく。
 

 

 
気温も徐々に上がり、のども渇きはじめた頃。それまで遠巻きに眺めていた来場者が、ビールをはじめとした飲み物やフードのテントに足を向け、そのままステージに近づいていく。徐々に、保養村が本格的なフェス会場としての表情をあらわしはじめた。


 

自然を譜面に落としたかのようなAmetsubのプレイ

 
今回のフェスに出演してくれたのは、どれもバンドではなくDJセットがあればプレイできるアーティストたち。バンドならではの楽しみはもちろんあるが、今回のような無料で市民に開かれているタイプのイベントでは、その転換時間に離脱してしまう人も多いだろう。
 
絶え間なく続いていく音の連鎖に、ついつい腰を下ろして長く楽しんでいこうという人が増えてきたあたりで登場したのがAmetsubだ。
 

 
エレクトロニカのジャンルでは世界的なアーティストとして知られている彼の、ミニマルなトラックが会場をつつむ。それと合わせてゆったりと奏でられるカリンバが、しかし次第に勢いを強め、エフェクターによって増幅されていく。まるで雨や雷といった自然現象が、そのまま譜面に落とし込まれたかのような、心地よさに自然に体が揺れていく。
 
徐々に日も傾きかけてきた頃、会場にはリラックスしたムードがただよっていた。音楽好きも、偶然立ち寄ったファミリーも、それぞれのやり方でこの不思議なフェスを楽しんでいるようだ。
 

 

 

 

暗闇に包まれた保養村に、あの男が現れる

 
日の入りの時間が近づくと、保養村全体が暗転されたかのように辺りが暗闇に包まれていく。そんな時間帯に登場したのがTOYOMU。1990年生まれ、京都在住の若きビートメイカーながら、すでに海外のメディアでも取り上げられている彼のプレイに、フロアの熱気が高まっていく。暗くなったせいもあるだろう、何かを確かめるように、つよくビートに体を当て、揺らすようなお客さんが増えてきた。
 

 

 
武雄の夜は暗い。そんな言葉を現地の人から聞いていたが、特にこの保養村エリアは、近くに住宅などもないため、漆黒の闇といった状況。しかし物騒な印象は一切なく、むしろ山々と湖に囲まれたこの空間の暗さは神聖さに近いものを感じる。明かりはステージトラックの照明だけ。そこに浮かび上がったシルエットが、この日のトリをかざった田我流 & YOUNG-Gだ。
 

 
自身の地元である山梨県の地元・一宮町と、ここ佐賀県武雄市。その「田舎さ」を比べ親近感を感じさせられるMCをはさみながら、小刻みにライブが進んでいく。
 

 
「みんなアレ聴きたいんでしょ。濡れる、だか、増える、だかっていうあの曲をさ」という一言のあとに始められたのがEVISBEATSによる名曲「ゆれる」だ。田我流のテンポにあわせて体を揺らせながら、そこで脳内に浮かび上がってくるのは、彼の地元で撮影されたMVの風景。さきほどのMCとオーバラップして、この国の様々な地方に思いを馳せてしまう。
 
そこからは、あっという間だ。観客を煽った瞬間に始まった「やべ〜勢いですげー盛り上がる」では、DJブースからYOUNG-Gがそれこそ「やべ〜勢い」でステージ前に飛び出し、田我流と並び立つ。ヘッズを中心にした最前列の観客がそれに答え、後列にまで盛り上がりが伝わっていく。
 

 

 
その盛り上がりの頂点を狙うかのようなタイミングで、田我流が、飛んだ。
 

 
そして彼のアクトをもって、<MABOROSHI FES by taicoclub>は閉幕した。
 

祭りの終わり、次への準備

 

 
舞台が暗転して作業用の照明に切り替わる。
出店のバラシ作業は、どうやらすでに終わったみたいだ。
名残おしそうに、酒を酌み交わしていた観客たちも、もうシャトルバルに乗り込んでいったのだろう。
 
あまりにも激しく、そして感動的だったフェスも終わり、人気をなくした保養村。音楽には、というよりも、祭りにはいつも、まるで幻かのような儚さがその傍らにある。そしていつだって盛り上がった後に広がるのは、あの時は楽しかったという感傷だ。でもその中に確実にある、これで終わらせたくない、という祈りのようなもの。それがまた新しい祭りをつくる。第一回としての<MABOROSHI FES by taicoclub>には、そんな祈りが満ちていた。
 


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